【外科医の感想】ブラックペアン シーズン2 (1話)を考察・解説【ネタバレ】

【外科医の感想】ブラックぺアン シーズン2 1話の解説・考察

ブラックペアン シーズン2 が7月7日から TBSテレビ 日曜劇場 毎週日曜よる9時放送開始となりました。

7月7日に放送された1話をみて、外科医である筆者が自由に感想・考察を述べます。

ブラックペアン シーズン2 の2話以降をより楽しみたい方に向けた記事です。

ネタバレを含みますので、まだみていない方はご注意ください。すでに ブラックペアン シーズン2 の1話をご覧になった方向けの記事です。

外科医aru

旧帝大医学部卒業。王道外科医をしていましたが日本の医療の状況に嫌気がさして、現在は王道からは退いています。専門領域は消化器で心臓の知識は専門医レベルではありませんが楽しくブラックぺアンをみています。

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ブラックペアン シーズン2 の手術シーンはリアル

ブラックぺアンはシリーズ1から手術シーンがリアルでしたがシリーズ2の1話ももちろんリアル。

手術の手順や使う道具も場面に合ったものになっています。

手術シーンに限らず、登場する医師の言葉遣いなど細かいところまでこだわっていることがわかるドラマです。

もちろん「ドラマ」ですので、面白くするための非現実的なシーンもたくさんあります。追って解説します。

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リアリティだけを追求すると流石にドラマとしては退屈になってしまいます。

以下ブラックペアン シーズン2 の1話について、時系列に沿って各シーンについて解説します。

ブラックぺアン シーズン1 についてはこちらで解説しています▼

登場人物はみんな「医局員」

ドラマで中心となっている外科医たちはみな「医局員」です。

医局員とはどういう人のことか、ドラマに合わせて解説します。知っているとよりドラマを楽しめます。

医局員について解説

医局員とは、医局に所属している勤務医のことです。

医局とは、事実上医師の人事権を握っている組織のことで、各大学各診療科ごとに設置されています。

教授をトップとしたヒエラルキーが存在しています。ドラマでも再現されていますが、平の医局員は教授には逆らえません。

ヒエラルキーについて解説

医局員のヒエラルキー
  • 教授:佐伯
  • 准教授:黒崎
  • 講師:高階
  • 平(ヒラ)の医局員:世良など

と明確に医局員内でヒエラルキーが存在しています。ドラマは違和感なくこのヒエラルキーは伝わるようになっています。

ドラマでは出てきませんが、医局を抜けることを「ドロップアウト」といい、ドロップアウトした医師のことを「どろっぽ医」といいます。

大学病院の「医局員」は低収入のことが多い

驚くかもかもしれませんが日本では、大学病院など高度な医療を扱う医師ほど年収は低い傾向にあります。

医師は高給取りのイメージがありますが、一部医師はその将来性も危ういです。

日本の医療の大きな問題点の一つです。

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ここからはブラックペアン シーズン2 の1話で気になったシーンを時系列順に解説します。

世良先生が病院に住むようになった?

世良先生が心臓外科医に

ブラックぺアン シーズン1 では初期研修医をしていた世良先生。初期研修修了後に東城大学の系列病院で3年間実績を積んで大学病院に戻ってきて心臓外科医となりました。

3年間という設定はリアルです。その3年間で後期研修を終えて「外科専門医」を取得したと思われ、大学に戻って今度はその上の「心臓外科専門医」を取得する段階であると思われます。

病院の仮眠室の住民に

ブラックぺアン シーズン1 では渡海先生が病院の仮眠室にほぼ住んでいるという設定でした。

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実際にもほぼ病院に住んでいるような外科医はよくいます。そんなところまでリアルで面白いです。

ブラックペアン シーズン2 では渡海先生の指導を受けていた世良先生が「病院に住む」ことまで見習ったようです。

病院に泊まり込んで夜間の緊急手術を請け負うことは実際に手術の上達にはつながります。しかし、体にはかなり負担がかかrます。

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私は病院泊まり込みは4連泊くらいで体がキツくなりました。

外科医は実際病院に泊まり込まないといけないことがある忙しい仕事です。

詳しくはこちらで解説しています▼

冒頭の挿管シーンの感想

ブラックペアン シーズン2 の1話の冒頭。仮眠室で起こされた世良先生が急変した患者のもとに駆けつけます。

血圧は60台。血液中の酸素の量の指標である「サチュレーション」は92%。

研修医と思われる医師が口から管を気管に「挿管」しようとしていますが、世良が変わって挿管します。

「1000万払えよ」という渡海を真似た冗談をかましますがスベってしまいます。

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ブラックぺアン シーズン1 では頼りなかった世良先生の成長を表現しているシーンです。

挿管しようとしていた研修医は優秀

このシーンに出てくる研修医は優秀です。

心臓外科医(上級医)である世良よりも先に現場に到着し、「挿管する」という判断をして場を整えて、挿管しようとしています。

研修医でここまでできることはなかなかありません。

看護師も優秀か

挿管に「ビデオ喉頭鏡」を使用していることも◎

世良が挿管したあと、エコーを要求しますが、サッと「ポータブルエコー」が出てきたのも◎

看護師が準備したか、研修医が用意を指示したかはわかりませんが良いですね。

世良は介助して研修医が挿管するのがベター

世良は挿管しようとしている研修医と変わって挿管していますが、せっかく場が整っていて「ビデオ喉頭鏡」を使用しているのですから、世良は介助して研修医が挿管するのがベターです。

患者の左横から後頸部を持ち上げて挿管しやすくして、ビデオ喉頭鏡の画面を見て研修医を指導しながら挿管してもらう方がより早く挿管が完了します。

ここまで頑張った研修医は挿管まで自分でやりたかったと思われます。その機会も奪わずに済みます。

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処置成功までの時間も最小限にして、さらに研修医に成功体験を提供することができます。

心タンポナーデの子供を救うシーンの考察・解説

このシーンはやや非現実的です。

しかし、登場人物の医師を引き立てるシーンで面白いです。

医師目線では垣谷先生は優秀

倒れている少年が唇が青く、呼吸が停止しており、冒頭シーンでも出てきた「サチュレーション」が低下しているものと思われます。

垣谷先生は「アナフィラキシー」だろうと判断しています。

アナフィラキシーだと「喉頭浮腫」が出現するため、停止した呼吸を手助けするためには「輪状甲状靭帯穿刺」の必要があると判断したと思われます。

垣谷先生がボールペンで「輪状甲状靭帯穿刺」しようとした手を止めて天城先生が「心タンポナーデじゃない?」と言い、施すべき処置の具体的な方法を言います。

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医師がみていて面白いシーンです。疾患の頻度と状況的に、サーフボードで胸を打って心タンポナーデになっているより、虫やクラゲに刺されてアナフィラキシーを起こしている確率の方が高いかなと思いました。

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生死を彷徨う少年を助けるためにボールペンで輪状甲状靭帯穿刺を行うことを瞬時に判断できた垣谷先生も優秀です。「心タンポナーデ」だとしても処置中の呼吸の手助けのために行っても無駄にはなりません。

この場面で心タンポナーデの診断は難しすぎる

天城先生の天才っぷりを引き立てるシーンですが、流石に心タンポナーデを自身を持って診断することは難しすぎる場面と思います。

消毒用の製剤は持ち歩きません

心タンポナーデの処置のためにハサミと術野を持っていた薬品で消毒する場面がありますが、さすがに持ち歩いていることはありません。

このシーンの場合は消毒できなくても、後日感染を起こしてでも一旦は救命優先で処置を行うのが正解になります。

ダイレクトアナストモーシスについて

類似する手術に関する論文がないか調査中です。

後日詳細に記載します。

海の見えるオペ室

オーストラリアの病院で天城先生がダイレクトアナストモーシスの手術を行うシーンがありますが、オーシャンビューのオペ室です。

オペ室は照明環境などもコントロールされているので、日光が入る構造になっていることはありません。

ブラックぺアンのツッコミどころ|外科医の感想

ブラックぺアン シーズン1 シーズン2 共通のツッコミどころについてゆるく紹介します。

どれもドラマのための演出であり、致命的なツッコミどころはありません。

トラブルや急変が多すぎる

名探偵コナンが泊まったホテルでは必ず人が死にますが、それに近いものを感じます。

仮眠室が場末病院

ブラックペアンの舞台となっている東城大学医学部附属病院(架空の病院)は比較的きれいで新しい病院ですが、仮眠室の環境が悪いです。医師を大切にしていない病院であることが伝わってきます。

シリーズ1から変わっていませんでした。

仮眠室というのは医師が夜中まで働いて帰れなくなってしまった場合や、心配な担当患者がいる場合などに病院に泊まる時に利用する部屋です。通常は個室です。

医師がホールで集まっているシーン

佐伯教授と黒崎准教授を先頭に外科医がホールで集結している場面がよく出てきますが、あれは「カンファレンス」と呼ばれる会議です。

通常は大学病院といえども毎回あんなホールで行うことはありません。

また、仕事やバイトで忙しいため全員が毎回集結することはありません。

「手術成功」という表現

医療ドラマ全般に言えることですが外科医は決して手術が終わった時に「手術成功」などとは言いません。

手術が成功したかどうかは短期的、長期的に合併症が起きなかった時に初めて分かるからです。

実際は「手術が無事に終わった」と表現します。

ブラックペアン2-1話外科医の感想・考察|まとめ

リアルではないポイントやツッコミどころなどを書かせていただきましたが、どれもドラマとして面白くするための演出として納得できるものでした。

基本的には細部までリアルにえがかれていて、医師による監修をしっかり受けてこだわって作られたドラマであることが伝わってきます。

外科医である筆者も楽しく拝見させていただきました。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

【外科医の感想】ブラックぺアン シーズン2 1話の解説・考察

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この記事を書いた人

地方旧帝大医学部卒業。外科医を全力で務めあげたのちに、全力で脱医局、転職を果たしました。医師の転職の素晴らしさに気づき、同じように人生がより良いものになる医師を増やしたいとの思いで情報発信しています。

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