外科医あるある:外科医と名乗ると仕事内容に興味を持ってもらえる
外科医は忙しいって聞くけど実際どんな仕事をしているの?と疑問に思う方も多いと思います。
外科医になることを考えている医学生や研修医の先生。外科医と関わりのある患者様。
本記事を読めば、大きい病院の外科勤務医の仕事の大体のイメージが掴めるかと思います。
また、外科医がさらされている激務や待遇の悪化についても触れ、外科医が減っている現状についても解説します。
旧帝大医学部卒業後、田舎の忙しい基幹病院で研修医として就職。そのまま外科医となり、2度の転勤を経験。最新のロボット手術にも携わり、手術執刀経験は500件超え。夜間緊急手術も大好きなバリバリの外科医でした。
外科医とは
まずは一般的な「外科医」とはどのような医師を指すのかを解説します。本記事は大きな病院(急性期病院)の外科勤務医にフォーカスしていきます。
広義の「外科」は多くの診療科を含み、手術を行う診療科全般を指します。心臓外科、脳外科、消化器外科の他、泌尿器科、耳鼻咽喉科…等々。現場では広義の外科は「外科系」と言います。
通常「外科」は主に消化器外科のことを指します。「一般外科」「腹部外科」などとも呼ばれ、「ぱんげ」「はらげ」などと略されることも多いです。お腹の中の消化器(食道、胃、十二指腸、肝臓、胆のう、膵臓、小腸、大腸、直腸など)を主に扱っています。
現場では略していうことが多いのですが、血管外科は「けつげ」です。。。
乳腺外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科などを「外科」に含む場合もありますが、世の流れとしては専門の細分化が進んでおり、含まない方向に進んでいます。
「外科医」は、
主に消化器の手術をする医師を指します。
医療現場だと、筆者は以前は「外科医」、今は「外科系医師」と言われるポジションです。世間的には「外科系医師」全体を「外科医」と呼ぶことが多いです。なので「外科医」を名乗らせてもらっています。
外科医の仕事内容
外科勤務医が病院で何をしているのかを解説します。外科医の行う医療行為は非常に多様です。
外科医は手術だけでなく、いろいろな仕事をしています!
手術
まず第一に外科医と言えば。
外科医はみんな手術がしたくて外科医になったと言っても過言ではないと思います。
手術の魅力についてはまた後で述べます。
手術が終わると手術直後の仕事があれこれあります。切除した臓器を検査に出すために整えます。患者様のご家族に手術内容を説明します。手術直後の点滴やお薬の内容の調整を行います。手術内容にもよりますが、手術後1時間半程度は拘束されます。
腹部手術は、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術と主に3種類あります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください!3種類すべてについて解説しています。
病棟管理
手術前や手術後の患者様の入院管理を行います。回診して、検査結果を確認して、治療の調整を行います。
病棟管理には外科疾患のみならず、幅広い知識が要求されます。外科医といえど内科的知識も必要となります。
各診療科の中でも外科は濃密な病棟管理が必要な事が多く、仕事のウエイトとしては重めになっています。
しかし、病院によっては不当に「自己研鑽」扱いとされます。残業しても時間外手当が支払われないことが多いです。
「自己研鑽」に関してはこちらの記事をご覧ください!
外来
手術前後の通院治療患者様の外来を行います。大きな病院では、週に1,2回のことが多いです。
外科医は外来が苦手な先生が多いです。筆者もその1人でした。手術室にいたい!
外来がお好きな先生は開業される事が多いです。
外来は予約枠を超過して患者様を受け入れていることも多く、時間的余裕がありません。
事前の「予習」が必要なことが多く、医師の大きな負担になっています。
病院の外来で長時間患者が待つのは、患者が多すぎて予約枠におさまらないことが原因です。筆者は3人/30分の枠に10人/30分を超えて予約しないとどうしようもありませんでした。
手術以外の処置
手術と手術以外の処置の線引きはあいまいですが、ここでは主に手術室以外で行う処置を説明します。
入院中、外来の患者様に処置を行なったり、他の診療科の先生から依頼をいただいて処置を行なったりします。
外科医が行う処置は全診療科の中でも多彩で、数も多いです。
日頃多くの処置を行っているため、外科医は「中心静脈カテーテル挿入」「ナート(傷口の縫合)」などの医師に一般的な処置が上手な事が多いです。診療科ごとの風通しのいい病院などでは、頼ってもらえる事が多いです。
医師から頼られる医師というのはやりがいを感じます。
筆者も自分よりも医師経験の長い内科系上級医の処置指導などをさせていただく機会が多くありました。
カンファレンス
日本語にすると会議です。医療職では慣習的に「カンファレンス」略して「カンファ」と言う事が多いです。
その病院の外科医みんなで(緊急手術などでそろわないこともしばしば)今後行われる予定の手術の内容が妥当か検討したり、入院中の患者様の治療が適切に行われているか検討したりします。
朝に行われていたり、夕方に行われていたり、頻度も病院によってバラバラです。
勤務時間外に行い、なおかつ、時間外手当が支払われないことも多い業務です。改善が求められます。
書類仕事
外科医に不人気の仕事No.1(筆者調べ)
医療保険の診断書の記載。その他、サマリの記載や紹介状の記載など。
量が多く、日中は時間がないため、夜な夜なサービス残業して書いている実情です。
病院側は診断書は1枚3000〜5000円程度、紹介状は1枚2500円と儲かります。しかし、医師へのインセンティブなどなくタダ働きさせられています。
夜中に書類を処理しながら、同僚とよく愚痴を言い合ったものです。筆者は転職し、この仕事から解放されました!
学術活動
学会発表や論文執筆なども外科医含めた医師の意外に大きなウエイトを占める仕事です。
そして医療業界の闇です。
麻酔
これは地域や「医局」にもよるようですが、外科医は自分たちがする手術の全身麻酔や脊椎麻酔などを自分たちでやります。
「自科麻酔」といいます。
麻酔が難しい症例に関してはもちろん麻酔科の先生にお願いして麻酔をかけていただきます。
筆者も研修医のうちに麻酔科の先生にお願いして、必死に麻酔を勉強しました。
「医局」に関してはこちら!
日当直
病院の救急外来は当番性で若手医師が担っていることが多く、外科医も例外なくやらされます。
この仕事もほとんどの外科医があまり好きではないですね。好きな人は救急科に進みます。
一般的に外科医は救急の現場での能力は高い方の部類になり、救急の看護師さんから「先生が当番だと助かる」などのお言葉をいただけることが多く、その言葉でなんとか救急をこなしている外科医は多いのではないでしょうか。
また、この日当直という仕事は医療現場の闇です。
通常の勤務を終えて、そのまま「当直」で朝まで寝ずに働きます。その後、また通常勤務が始まるのです!36時間以上の連続勤務です!
患者様は寝ていない医師の医療行為を受けることになります。医療の安全性に関わります。
また医師の健康問題も深刻です。
さらに!給料すら適切に支払われていないのです。
ぜひ以下の記事を参照してください。
on call / 待機
勤務時間外に、緊急での外科医の診察や緊急手術が必要な患者様が来院した時のために、すぐ病院からの電話にでて駆けつけられるように待機します。
他の診療科に比べても呼ばれる頻度は非常に多く、また呼ばれた際に手術を行うと拘束時間が長くなります。夜中に緊急手術をしても翌日も通常勤務となる病院が多いのが現状です。
医師の数は増えているのに、外科医になる人は年々減っている1番の原因となる仕事内容はこちらでしょうか。確かに闇が深い仕事内容です。
外科医の1週間の働き方の1例
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病院により大きく差が出るところですが、筆者が手術件数が多い、大きな病院にいた時の標準的な1週間を例にあげます。
「標準的」な1週間です。これよりもっと忙しい時もあります。
むしろこちらは日当直がなかった1週間ですので、比較的楽な方の週かと思います。
深夜に働いても翌日普通に仕事があることが多いです。
この1週間の流れについてこちらの記事で詳しく解説しています▼
外科医の仕事の魅力について
なんと言っても外科医の仕事の魅力は手術だと思います。
薬物治療など手術以外の治療が進んだ現代でも手術にとって変わる治療はありません。
無治療なら数時間後に亡くなる方を手術で救命し、元通りに元気になって退院されるのを経験できるというのが外科最大の魅力だと筆者は感じます。
外科医はみな手術が好きです。そんな手術が好きな人たちと一緒に仕事をして、手術の話をするというのはこの上なく楽しい時間です。
筆者は外科の世界に魅了され外科医になりました。大きな病院(急性期病院)の「the 外科医」は辞めてしまってはいるものの外科医になったこと自体は少しも後悔していません。
外科医の仕事まとめ【訴訟リスクと待遇悪化で外科医は減っています】
外科医の仕事内容の多彩さ、多忙さはご理解いただけたかと思います。
好きじゃないとできない仕事ですが、その魅力も底知れません。
大きな病院(急性期病院)の「the 外科医」は常に命と隣合わせの現場です。手術により起死回生の治療ができることもあれば、どうしようもできないことももちろんあります。
どうしようもない時、やはり外科医は辛いものです。
さらに、追い討ちをかけるように世間の非難にさらされたりします。
例えどんなに正しい判断をして、正しい治療を、ミスなく行なっても結果が残念だと理不尽な目に遭うことがあります。
理不尽な世の中に外科医はさらされています。そのせいで外科医は減少しています。
以下の記事を参照してください。
世の中が敵に回る大きなリスクを背負いながらその待遇も悪化しています。
なんと味方と思っていた、厚生労働省も敵であったことが「医師の働き方改革」により明らかになりました。
八方塞がりで、外科医の減少は近年止まりません。
非常にいい仕事なのに残念です。
外科医のみならず、忙しい「王道」勤務医全体にいえる話です。
筆者も王道の外科医は辞めざるを得ない状況となり、なくなく転職しました。医師は転職が非常に有利な職業と言えます。労働時間を減らしつつ、給料増加が楽勝です。
ここまで読んでくださった先生が見えたらぜひ「転職の検討」してみてください。
ノーリスクハイリターン、視野が広がります。転職しなくても現状にプラスに働きます。
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