「医師は忙しい?どんな働き方をしているの?」
「医師の働き方改革で結局、何が改革されたの?」
「医師の働き方改革の患者への影響はあるの?」
「宿日直許可は何のための制度?」
これらの疑問にわかりやすく答えます。
医師の働き方改革について、2019年からその準備期間として徐々に改革が行われ、2024年4月より実行となりました。
厚生労働省は働き方改革により、医師の長時間労働の是正を目指しました。
しかし、仕事量を減らす改革がなされず、労働時間はほとんど変わっていないのが実情です。
結果的に、働き方改革の対象となった医師の待遇が悪化しただけです。
本当に問題点だらけの改革です。筆者はその悪影響をもろに受けました。労働量は変わらず、給料だけ減りました。
「宿日直許可」という最悪の制度も導入されました。
「働き方改悪」「働いていないことにする改革」
医師の働き方改革は現場ではこのように言われています。
- 働き方改革が必要となった背景
- 働き方改革と宿日直許可の内容・問題点
- 働き方改革により本来目指していた姿
- 働き方改革で実際にどうなったか
- 「働き方改悪」「働いていないことにする改革」への対処(医師向き)
旧帝大医学部卒業後、田舎の忙しい基幹病院で研修医として就職。そのまま外科医となり、2度の転勤を経験。最新のロボット手術にも携わり、手術執刀経験は500件超え。夜間緊急手術も大好きなバリバリの外科医でした。
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医師の働き方改革が必要となった背景
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出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001129457.pdf)
医師の長時間労働
病院常勤勤務医の約4割が年960時間超、約1割が年1,860時間超の時間外・休日労働。(2016年,平成28年)
年960時間だと月80時間平均、年1860時間だと月155時間平均。過労死ラインが月に80時間の時間外労働なので、統計上、半数の勤務医が過労死ライン以上の労働をしていることになります。
日中に通常勤務後そのまま夜間当直で朝まで働き、その後休みなくまた通常勤務を行うというのは医師にとっては普通のことです。
患者様は一睡もしていない医師からの医療行為を受けることになり危険です。医師の健康問題も深刻です。
筆者は月平均160時間程度、最高250時間の時間外労働をしていました。慢性的な寝不足でした。
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上の図は例として、筆者の若手外科医時代の「標準的な1週間」の働き方を示しています。
思い返すと大変でした。
こちらの記事で詳しく解説しています▼
労務管理が不十分
客観的な労働時間の管理が行われていない医療機関(病院)も存在。
これが大きな問題!
この背景から、働き方改革により適切な労務管理を行いましょうと、厚生労働省は言っています。言うだけ。
残念なことに、働き方改革で労務管理の対策・改善の具体策が乏しく、現場任せです。
その結果、むしろ医師の労務管理の実情は悪化しました。
厚生労働省は「宿日直許可」という制度を設けて、悪質な病院の手助けまでしてしまっている実情です。あとで解説します。
→こちらから「宿日直許可」の解説に飛べます
「働き方改悪」「働いていないことにする改革」といわれる由縁です。
以下の記事が、どう悪化したかの具体例として参考になります。
参考:Yahoo!ニュース 「病棟にいる間は“勤務時間”、医局にいる間は“休憩”とカウント 救急診療を行う総合病院の取り組み 過労死ラインを超える過酷な労働環境は変えられるか」
勤務医は「ピッチ」「PHS」という院内用の小型電話を持ち歩いていてひっきりなしに電話がかかってきます。「休憩」などありません。医局(医師の詰め所)でもカルテ記載や診療に必要な調べ物をしていることが多く、「休憩」できる勤務医はほとんどいません。
医師に法定の休憩時間が与えられていないことは問題なのですが、改善までは時間がかかりそうです。
それどころか逆に、働いている時間すら「休憩」とカウントしようという動きがみられているのです。最低です。
筆者は月平均160時間程度時間外労働をしていましたが、実際「時間外労働と認められた時間」は月平均50時間程度でした。悲しい!
業務が医師に集中
医師免許がなくてもできる仕事を医師が多く負担しています。
日本は特にこの傾向が顕著です。このため、医師は長時間労働を強いられてます。
働き方改革により、医師免許が必要ない仕事はその他の職種が行う(タスクシフトする)ようにしましょうと、厚生労働省は言っています。言うだけ。
医師以外の医療関係者も足りていないのです。
悪質な病院側からすると医師をタダ働きさせて、サポートする人たちの人件費は節約した方がいいですから、なかなか改善してくれません。
なぜか医師(特に大きな病院の勤務医)はタダ働きさせていいという風潮があります。
医師の働き方改革により本来目指していた姿
- 医師の長時間労働
→労働時間の短縮 - 労務管理が不十分
→労務管理の徹底 - 業務が医師に集中
→タスクシフトにより医師の負担軽減
以上のように、医師の長時間労働を改善して、健康を確保しながら勤務できる環境の実現を目指した一連の取り組みが(本来の)「医師の働き方改革」です。
医療安全面のメリットもあり、患者様の安全を守ることにもつながります。
目標設定は素晴らしいと思います。
実際にこの目標に向かって改革し、労働環境が改善している病院もあるようです。
しかし医師の働き方改革により、むしろ労働環境が悪化した悪質な病院が多いです。
以下、そのような悪質な病院で起こっていることを解説します。
残念ながら、厚生労働省が悪質な病院に加担してる側面もあります。
医師の働き方改革の内容と実情【宿日直許可とは?】
働き方は変わらないのに、「働いていないこと」にされて時間外手当が支払われなくなり給与が減少。
現場を離れる医師が増加し、むしろ残された人はさらに重労働となりました。
詳しく解説していきます。
医師の時間外労働の上限規制
医師の時間外労働を、施設によって年間960時間または1860時間に規制するというものです。毎月あたり80時間または155時間となります。
先に述べた通り、多くの勤務医がこの基準以上に労働しています。2019年からの医師の働き方改革の前の準備期間に、是正が必要と厚生労働省より、各病院へおふれが出されました。
しかし、具体的にどのようにして労働時間を減らすかは現場任せ。
本来の目指す姿の実現のために、勤務医の環境の改善に真面目に取り組んだ病院もありました。しかし、労働時間の隠蔽を行なった病院が多かったです。
働いている時間を「働いていないこと」にしたのです。こんなことするのが日本の医療現場です。根本的に腐っています。
以下は体裁上のデータです。平成28年度(2016年)と比較して令和元年(2019年)は60時間を超える時間外労働が減少しています。
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出典:医師の働き方改革について(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000818136.pdf)
このデータは「労働していないことにした」分は含まれていないので現実とは異なることに注意が必要です。
実際に勤務医の労働時間の削減に取り組んだ病院もあったようです。
しかし、「労働していない」ことにして体裁上の労働時間の削減に取り組んだ悪質な病院が多い印象です。給料を減らしただけです。
労働時間を「労働していないことにする」主な方法は「自己研鑽」の概念の活用です。
▼詳しくは以下の記事をご参照ください▼
以下の記事も非常に参考になります。
NHK NEWS WEB「あれが労働じゃなければ、何なんだ」日本の医療はどこへ行く
患者様の診察の時間も「労働していないことにされる」ことが非常に多く、「手術や処置を実際にしていた時間だけが労働時間として認められる」ことも珍しくありません。(筆者のいた病院のうちの一つもこれでした)
コンビニのバイトで例えると、レジで待機したり、商品の棚出しなどの時間は時給が発生せず、接客・レジ打ちをした時間のみに時給が発生するようなものです。
ひどいですね。
それがまかり通るのが医療の現場なのです。
医師の時間外労働の上限規制により「体裁上の労働時間」が減少して給料が減りました。実際の労働時間は減少していません。改革失敗です。
宿日直許可
医師の働き方改革と宿日直許可は切り離せない内容です。
わかりやすく解説します。
宿日直許可 導入の背景
医師は夜間や休日も緊急を要する患者様のために当番制で労働します。これを日当直と言います。
以前まではこの日当直勤務時間中は全て時間外労働とみなす決まりとなっていました。(当たり前ですね)
しかし、以前から日当直の時間外労働はないことにされて、時間外手当てが支給されていない病院が多いです。
そのことが問題となり病院側が未払い時間外手当をまとめて支払ったケースもありますが、氷山の一角です。
日当直の手当が適切に払われている病院の方が少ないです。
なぜか医師(特に大きな病院の勤務医)はタダ働きさせていいという風潮があります。
筆者が働いたことのある病院は全て、日当直はほとんどの時間を不正に「働いていないこと」にされていました。
宿日直許可とは
宿日直許可とは「常態としてほとんど労働をする必要のないこと」を条件に、日当直の時間が「労働基準法上の労働時間規制が適用除外となる」制度のことです。
簡単に言い換えると、仕事が少ないことを理由にして勤務時間を「働いていない」ことにできる制度です。
コンビニのバイトで例えると、深夜はコンビニへの来客が少ないので時給が発生しないようなものです。
ありえませんね。
医療の現場は腐っています。
実労働時間で考えると勤務医の時給はコンビニバイトより低い事はよくあります。
「常態としてほとんど労働をする必要のないことを条件に」の部分が宿日直許可の制度が始まった当初は守られていました。
しかし、働き方改革の実行が迫ってくるとともに、宿日直で全く寝ずに働くような病院にも許可が降りるようになりました。
なんと、「寝ずに働いている医師が翌日また診療を行うこと」「そのことに対して適切な賃金を払わないこと」を、厚生労働省が認めてしまったのです!!
これは厚生労働省さん、やってしまいましたね。
現場では「強制労働省」と揶揄されています。
2023年5月時点の宿日直許可申請の対応状況は、「申請して承認された」が58.0%、「申請して承認待ち」が7.6%で、約6割が申請済みという結果でした。
m3.com
2024年時点のデータは見当たりませんでしたが、夜間休日も忙しい病院を含め、非常に多くの病院が取得しています。
→なんと、2024年3月時点で9割の病院が取得しているようです。なんという制度でしょうか。(2024年4月追記)
許可を取らないと病院が回らないのです。
仕事量の調整をせずに、「働いていないことにする」というのが医師の働き方改革の実情です。
厚生労働省が医師の労働環境の適正化を、諦めたと解釈することもできます。
宿日直許可に関しては以下の記事が非常に参考になります。
NHK NEWS WEB「あれが労働じゃなければ、何なんだ」日本の医療はどこへ行く
こちらも参考になります。
TBS NEWS DIG「医師の働き方改革」来月開始も「宿日直」は労働時間外「宿直明けは1日働いて帰ります」
問題点だらけ!医師の働き方改革の医療への影響
働き方改革の本来の目指す姿に向かって改革に取り組んでいる病院も少ないながらあります。そこで働く勤務医の労働環境は改善されています。
しかしその一方で、本来の目指す姿と逆方向に向かい、勤務医を「働いていないこと」にして時間外手当をカットするだけという病院も後をたたないのが現状です。
労働環境が改善する勤務医と悪化する勤務医と明暗がすでに別れていますが、もっとはっきりしてきそうです。
悪い方向に向かう病院が多い地域ではいずれ、現場を離れる医師が増えて地域住民への影響も出ます。
コンビニバイト以下の、家族を養うことができないような低時給。過労による体調不良。働き方改革の魔の手からやむをえず逃げる勤務医が増えています。
必要な医師が確保できない地域は「医療崩壊」へ向かい、患者様が医療を受けられなくなります。
医師の労働環境が悪いことは言うまでもなく患者様にも影響が出ます。悪質な病院の経営者以外は誰も得していません。
労働環境改善のための「働き方改革」がかえって医師の労働環境を悪化させています。
「働き方改革」ではなく「働いていないことにする改革」「働き方改悪」です
「強制労働省」さんしっかりしてください。
このままだと日本の医療はどうなってしまうのでしょうか。
「働き方改悪」「働いていないことにする改革」現場の声
こんなひどい改革ですので、現場からは非難が殺到しています。
その一部をweb媒体での公開が許されるXの投稿を用いて紹介します。
医療現場は厚生労働省に失望しています。筆者も厚生労働省の支配下から逃げる必要があると判断し、転職しました。
以下の記事も現場の声を集めた記事であり、参考になると思います。
「本気で臨床医辞めようかと」「時代の流れなので医療界も」◆Vol.9, 小川洋輔, m3.com, 2024年5月12日
「働き方改悪」「働いていないことにする改革」への対処
筆者が「王道の勤務医」を辞めようと決意した理由の一部に、この働き方改革の実情があります。
不満に思うならば転科、転職を「検討する」のが良いと筆者は考えます。
転職したら、労働時間を減らしながら、給料の増加が見込めます。王道の急性期医療から抜け出したら「働き方改悪」の影響のない医療現場はたくさんあります。
個人で「働き方改悪」に立ち向かうことは難しいので、影響の少ないところへ逃げるのです。
転職エージェントに登録して、大満足の転職ができました。実際に転職活動をしてみて、医師なら誰でも転職に満足できると思いました。
勤務医の初めての転科、転職はハードルが高いと思います。
筆者も高いハードルを感じていました。
脱医局、その後の進路、築き上げてきた社会的地位など
ポイントはまずは「検討する」だけでいいということです。これならハードルは高くないです。
本当に逃げないといけないと思った時にすぐに逃げられるように準備しておきましょう。
ここまで読んでくださった医師の方にはまず、以下の記事を見ていただきたいです。
「転職を検討する」ことはほぼノーリスクです。そして検討してみることでメリットは非常に大きいです。万人に勧めます。
悪質な病院の最低な病院経営者の下で働いているというのが筆者としては恥ずかしかったです。関わってはいけない残念な人たちです。医師としては一流の人もいますが経営者としては最底辺。医局の関連病院はこんな病院が多いのではないでしょうか。
転職を検討して、そんな人たちと関わらなくて済む未来へ向かっていきましょう。「強制労働省」も助けてはくれません。むしろ、悪質な病院の最低な病院経営者の味方かな。
自分で動きましょう。
医師の転職は本当に最高ですよ!!
労働時間を減らしながら収入増加が楽勝です。
みんなが逃げ出してしまったら、逃げ先もなくなります。そうなる前に早めの行動をとりましょう。
まずは「検討」を。→こちらから!
急性期の医療現場は本当に腐っています。他の医療現場や他の業界と比べてみてください。
「医局」も医療現場が腐っている理由の一つのように感じます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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