【外科医が解説】ブラックペアンはリアル?感想・考察をネタバレ最小限で

ドラマ版ブラックペアンを外科医が解説。感想、考察をネタバレ最小限で。

本記事ではテレビドラマ版の ブラックペアン シーズン1 で気になる場面を外科医である筆者が解説します。

”佐伯式” や ”スナイプ” は実際に存在するのかなどの疑問にもお答えしていきます。

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本記事を読むことでドラマをより楽しめるようになります!

ネタバレは最小限にとどめています。これから見る方でもご覧いただける記事として書いていますが、自己責任にてお願いします。

また、個人的な見解や感想が多く含まれる点についてもご了承ください。

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旧帝大医学部卒業後、田舎の忙しい基幹病院で研修医として就職。そのまま外科医となり、2度の転勤を経験。最新のロボット手術にも携わり、手術執刀経験は500件超え。夜間緊急手術も大好きなバリバリの外科医でした。

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”佐伯式” ”スナイプ” ”ダーウィン” について

”佐伯式”と似たような術式はある

見るところ”佐伯式”とは「胸骨正中切開」「人工心肺」を用いて「心拍動下」で行う「僧帽弁形成術」のことのようです。

4つの条件全てを揃えた手術の報告は見つけられませんでしたが、ドラマでは「心拍動下」で行う「僧帽弁形成術」であることが重要視されています。

この2つの条件を満たす手術であれば報告があります。

仲村ら, 右小開胸による心拍動下僧帽弁再手術の経験, 日本心臓外科学会雑誌, 2014年, 43巻2号

”スナイプ” と似たようなデバイスはある

スナイプは経心尖部(心臓の先端)からのアプローチで、人工心肺を使わずに僧帽弁を人工弁に置換するデバイスです。

NeoChord®という、経心尖部からのアプローチで、人工心肺を使わず、僧帽弁を人工腱索再建によって形成するデバイスが実在します。

人工心肺を用いない「僧帽弁形成術NeoChord®」を成功

”ダーウィン” は「ダビンチ」がモデル

第5話以降から登場するダーウィンという手術支援ロボットは、実際に医療現場で広く使用されている「ダビンチ」がモデルになっていると思われます。

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ドラマとは直接関係がありませんが、私はダビンチをはじめとする手術支援ロボットに関して日本での使われ方に疑問を持っています。

ブラックぺアンの手術シーンはリアルなのか

リアルな手術シーン

基本的には手術室内のことが細部までリアルに再現されており、製作陣のこだわりを感じます。

手術室での医師の立ち回りやセリフなどがリアルです。

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細かいところはリアルです。大事なところは演出のために、リアルではありません。

リアルではない手術シーン

ドラマで大事な手術でのトラブルのシーンや、手術に対するマネジメントはリアルではありません。

リアルに再現するとつまらないドラマになってしまうので仕方ないと思います。

トラブルが起きた時のシーン

ドラマなので演出の兼ね合いで仕方がないと思いますが、外科医たちの手術室での感情の起伏が激しすぎます。

血が吹き出して慌てたり、手が震えていたりするシーンがよく出てきますが、これらは演出です。実際の現場では冷静に対処されています。

手術中の自分のメンタルのコントロールや手術の雰囲気作りも含めて「外科医の腕」です。

トラブルに対する対応力もあまりにも低い医師が多いのが気になります。これも渡海を引き立てるための演出です。

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実際と同じようにみんなが黙々と対処してしまってはドラマになりませんからね。

外科医たちの手術に対する姿勢がひどい

  • 医局員が教授に忖度して手術を行い、トラブルを起こす
  • トラブルシューティングに金銭を要求する
  • 教授がわざとミスを誘発するようなメンバーで手術をやらせる

といったシーンがありますが、手術に対する姿勢がひどすぎます。

実際は当然のことながら、トラブルが最小限になるように、手術がうまくいくようにと考えられています。

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このドラマは腕があまりに悪い外科医と、人格が破綻している外科医しか出てきません(笑)

登場人物について考察

ドラマでの渡海の振る舞いを見て、こんな外科医はいるのかと疑問に思う方もいるかもしれません。

結論、ここまで尖っている外科医たちは見たことありませんが似たような考えを持つ外科医はいます。

渡海について考察

キャラクター

渡海は「外科医は腕が全て」だと考え、腕のない外科医を追い込んで辞めさせてしまうようなキャラクターです。

患者を救い、合併症を起こさないという最も大事な点において「外科医は腕が全て」というのは事実です。ここを最重要視する考え方は一理あり、実際にこの考えをポリシーにしている外科医もいます。

腕のない外科医を追い込むような外科医も実在はします。しかし、渡海はやりすぎですし、ここまでの外科医は見たことも聞いたこともありません。

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ドラマ版と原作はかなり異なる作品になっていますが、原作は医師がかいており、キャラクターがリアルです。

病院に住んでいる

ブラックぺアンのリアルなところです。ほぼ病院に住んでいるという外科医は存在します。

外科医、特にドラマ版ブラックペアンでえがかれている心臓外科医は激務であり、家に帰る時間がなくてほぼ病院に住んでいるということはあります。

また、病院の居心地が良くてよく泊まっている医師もいます。

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医師は公私の区別が曖昧だったりします。いつも病院にいる医師というのはどこの病院にもいるのではないでしょうか。

筆者は心臓外科医ではなく、消化器外科医でしたが激務のイメージがつかめます▼

佐伯について考察

佐伯教授は確かな腕を持つが、出世のために汚いこともするキャラクターです。

このような教授は実在します。

腕があるだけまだいい方です。腕はないが「論文」や政治力だけで教授になったというような人もいます。

「論文」や「学会」などは医療の発展に関わる光の部分もありますが、医療業界の闇の部分も含んでいます。

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もちろん腕があって、医療に貢献する「論文」も多数かいている超人的で素晴らしい教授もたくさんいます。

高階について考察

高階は医療デバイス(スナイプ)により誰もが安定した手術を行えるようにすることを目指す外科医です。

ドラマでは特に前半では冴えない感じでえがかれていますが、医療は「再現性」つまり「基本的な技術があればみんなできる」ことが大事なのです。

1人のスーパードクターがいても救える人数は限られますが、どんなドクターでも一定以上のクオリティの医療を提供できれば救える患者の数は圧倒的に多くなります。

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手術はどの外科医でもできるように「定型化」されてきていますし、医療デバイスも発展してきています。

医局員たちの実際【渡海の年収も考察】

ドラマで中心となっている外科医たちはみな「医局員」です。

医局員とはどういう人のことか、ドラマに合わせて解説します。

医局員について解説

医局員とは、医局に所属している勤務医のことです。

医局とは、事実上医師の人事権を握っている組織のことで、各大学各診療科ごとに設置されています。

教授をトップとしたヒエラルキーが存在しています。ドラマでも再現されていますが、平の医局員は教授には逆らえません。

ヒエラルキーについて解説

医局員のヒエラルキー
  • 教授:佐伯
  • 准教授:黒崎
  • 講師:高階
  • 平(ヒラ)の医局員:渡海など

と明確に医局員内でヒエラルキーが存在しています。ドラマは違和感なくこのヒエラルキーは伝わるようになっています。

ドラマでは出てきませんが、医局を抜けることを「ドロップアウト」といい、ドロップアウトした医師のことを「どろっぽ医」といいます。

渡海の年収について考察

登場する医局員の年収について考察します。今回は主人公の渡海にフォーカスします。

医師の年収はヒエラルキーだけではなく、地域、勤務病院の規模、専門医資格の有無などさまざまな要素で決まります。

結論から言うと渡海の、病院からもらっている年収は低めだと思われます。予想350万円くらい

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勝手な予想ですが、根拠を解説します。

「大学病院勤務」「平の医局員」は医師の中で最も年収の少ない属性になります。

大学病院からもらえる給料は少ないので通常はバイトをして生計を立てますが、渡海はバイトをしている様子はありません。

また、ブラックペアンの舞台となっている東城大学医学部附属病院(架空の病院)は古い考え方の残る病院であることがドラマから伝わってきます。

これらの要素を満たすような知り合いの医師の年収は350万円程度です。

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医師は高給取りのイメージがあると思いますが、ピンキリです。

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ちなみにドラマで渡海は他の医局員の退職金をせしめていますが、医師は退職金そのものがないことも珍しくありません。

しかし、渡海の年収のポテンシャルはこんなものではありません。確かな手術の腕があり、医局を抜けてどろっぽ医になって正当に腕を評価してくれる病院を見つけたら億超えの年収も可能でしょう。

ブラックぺアンのツッコミどころ|外科医の感想

トラブルや急変が多すぎる

外科医としてポンコツが多いということもありますが、それにしてもトラブルが多すぎる。

名探偵コナンが泊まったホテルでは必ず人が死にますが、それに近いものを感じます。

仮眠室が場末病院

ブラックペアンの舞台となっている東城大学医学部附属病院(架空の病院)は比較的きれいで新しい病院ですが、仮眠室の環境が悪いです。医師を大切にしていない病院であることが伝わってきます。

仮眠室というのは医師が夜中まで働いて帰れなくなってしまった場合や、心配な担当患者がいる場合などに病院に泊まる時に利用する部屋です。通常は個室です。

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医師を大切にしていない病院は医師の給料は低めです。先ほどの年収予想で加味しています。

医師がホールで集まっているシーン

佐伯教授と黒崎准教授を先頭に外科医がホールで集結している場面がよく出てきますが、あれは「カンファレンス」と呼ばれる会議です。

通常は大学病院といえども毎回あんなホールで行うことはありません。

また、仕事やバイトで忙しいため全員が毎回集結することはありません。

「手術成功」という表現

医療ドラマ全般に言えることですが外科医は決して手術が終わった時に「手術成功」などとは言いません。

手術が成功したかどうかは短期的、長期的に合併症が起きなかった時に初めて分かるからです。

実際は「手術が無事に終わった」と表現します。

ブラックペアン外科医の感想・考察|まとめ

リアルではないポイントやツッコミどころなどを書かせていただきましたが、どれもドラマとして面白くするための演出として納得できるものでした。

基本的には細部までリアルにえがかれていて、医師による監修をしっかり受けてこだわって作られたドラマであることが伝わってきます。

外科医である筆者も楽しく拝見させていただきました。

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ブラックペアン2が7月7日から放送開始しています。こちらも目が離せませんね!

ここまで読んでいただきありがとうございます。

ドラマ版ブラックペアンを外科医が解説。感想、考察をネタバレ最小限で。

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この記事を書いた人

地方旧帝大医学部卒業。外科医を全力で務めあげたのちに、全力で脱医局、転職を果たしました。医師の転職の素晴らしさに気づき、同じように人生がより良いものになる医師を増やしたいとの思いで情報発信しています。

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