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【日本沈没!?】レカネマブが保険適応に【薬価、効果、副作用を解説】

アルツハイマー病による認知症の新しい治療薬として期待されているレカネマブ(レケンビ®︎)が、2023年12月に保険適応となりました。

しかし、非常に高額な薬であるため、社会保険料の負担増加への影響が懸念されています。

また、高額にも関わらずその効果には疑問の声が上がっており、副作用も懸念されています。

慎重に使用しなければ、日本を沈没へ向かわせる薬になります。

外科医aru

旧帝大医学部卒業後、田舎の忙しい基幹病院で研修医として就職。そのまま外科医となり、2度の転勤を経験。最新のロボット手術にも携わり、手術執刀経験は500件超え。夜間緊急手術も大好きなバリバリの外科医でした。

目次

レカネマブ(レケンビ®︎)の薬価・費用

レカネマブの日本の薬価・費用は、1人1年あたり298万円(体重50kgの場合)です。

2023年12月に保険適応となりましたので、その費用はほとんどが公費(社会保険料と税金)で負担されます。

ただでさえ日本の社会保険料と税金は増大傾向です。こうした高額な薬が多く使われるようになるとさらに国民負担が増えていくことになります。

「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は、2025年には約675万人(5.4人に1人)程度が認知症になると予測されています。

全員にレカネマブを使うと、追加で年間約20兆円(300万円×675万人)かかります。

負担しきれずに日本沈没となる可能性があります。

レカネマブ(レケンビ®︎)の効果

信じられないほど高額で、それでもみんなで費用を負担していこうと決まったなら、さぞ効果があるのだろうと思ってしまうところです。

いかがなものでしょうか。解説していきます。

Christopher Hら, Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease, NEJM, 2022年11月29日
PMID: 36449413より引用

少し見づらいのですが、図A、C〜Eはレカネマブ投与群とプラセボ(偽薬)投与群の認知機能の時間的推移を表した図です。それぞれ異なる評価方法で認知機能を評価しています。

縦軸は、黄色で「レカネマブ投与群」、青色で「プラセボ(偽薬)投与群」の認知機能

横軸は、時間経過を表したグラフとなっています。

下にいくほど認知機能は低いことになります。

つまり、レカネマブ投与群もプラセボ投与群も時間とともに認知機能が低下していくことを意味していますが、レカネマブ投与群の方が下がり方が緩やかです。

図BではPETという機会で脳内のアミロイド量(認知症の一因と言われている物質)を調べています。プラセボ投与群ではアミロイドの量はあまり変わりませんが、レカネマブ投与群では投与とともにアミロイドが減っています。

これらの結果から、レカネマブはプラセボに比べて脳内のアミロイドの量を減らして認知機能の低下(進行)を緩やかにしていると考えられます。

効果はあるようです。

しかし、服用18カ月で症状進行を27%(5.3カ月分)の抑制する効果がみられたにとどまります。

レカネマブには認知症の進行を多少緩やかにする効果しかありません。

おそらく、患者自身や家族からみても効果を感じる可能性は低いと思われます。レカネマブはあくまでも進行を抑える薬であり症状を改善させたり、元に戻したり、進行を止める訳ではありません。

つまり、年間約300万は1年投与したら終わり、ではなくずっと投与し続けるのです。

外科医aru

効果はあまり大きくないと言わざるを得ません。年間約300万ほどの意味がありますか?他に代替治療もいくらでもあります。

レカネマブ(レケンビ®︎)の副作用

製薬会社の治験の結果から、副作用としては、

使い始めの初期に、注射したときに頭痛、寒気、発熱、吐き気などが現れることがあります。 

また、特に使い始めて数ヶ月以内に、およそ10人に1人の割合で、脳がむくんだ状態になったり、脳内でわずかな出血が起きる副作用が確認されているほか、中にはより危険性の高い脳出血が起きた人もいて注意が必要です。

外科医aru

要注意な副作用として10%と高頻度に脳内の異常をきたす他、危険性の高い脳出血が起きる場合もあるようです。

副作用も要注意な薬です。

認知症は発症してから治療するのではなく予防するべきもの

認知症になってしまうとほとんどの場合はいい治療がないのが現状です。(原因により治るものもあります、認知症かなと思ったら医療機関を受診しましょう)

しかし、ほとんどの認知症は予防できます。(完全に防げる訳ではなく、発症しにくくできます)

認知症の発生に寄与すると考えられている因子に、難聴、喫煙、生活習慣病(高血圧、肥満等)、うつ、活動低下、社会的孤立などがあります。

つまり、反対に

  • 難聴の方は補聴器を使う
  • 喫煙者は早期に禁煙する
  • 生活習慣を改善する
  • 定期的な運動習慣やバランスの良い食事を摂る
  • 社会活動への参加・人との交流や外出等を行う

ことで認知症が予防できます。(特に太字のものはエビデンスがあります)

一部、予防の使用がない認知症もあり、それは致し方ないです。

レカネマブ まとめ

「対費用効果」を「製薬会社の忖度せず」考えると保険適応はもう少し慎重に検討するべきであったと思われます。

効果はあるため、決して悪い薬ではありません。しかし、公費で負担するべきでしょうか?

使うなら、認知症予防不可能な若年や、認知症予防の努力を尋常じゃないくらいしたけど進行してきた人くらいがいいと思います。

医療現場でも疑問の声が多いです。

適切に使用されることを願うのみです。

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この記事を書いた人

地方旧帝大医学部卒業。外科医を全力で務めあげたのちに、全力で脱医局、転職を果たしました。医師の転職の素晴らしさに気づき、同じように人生がより良いものになる医師を増やしたいとの思いで情報発信しています。

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